ちゃり鉄1号
~近鉄難波線・大阪線と青山高原~

三本松駅・近鉄大阪線

1日目:自宅-矢倉緑地公園

「ちゃり鉄1号」出発へ

2016年7月。

私は、自宅マンションの1階エントランスで、愛車の傍らに立ち、これから始まる長い旅への期待と不安を胸に、一人感傷にふけっていた。

各駅停車「ちゃり鉄号」の旅。

日本の鉄道・全線全駅とその沿線を、自転車で各駅に停車しながら、少しずつ走りつないで走破する壮大な旅が、いよいよ始まる。

「JR全線完乗」の目標のように、鉄道の路線に沿って、ただ、ひたすら各駅停車で旅をするのなら、少しずつ、走りつないでいくとしても、10年程度で終わることができそうだ。

しかし、ただ、駅を訪れるためだけに、寄り道もせず走り続ける旅は味気ない。

日本百名山・全山制覇の目標が高じて、「百名山にあらずば、山にあらず」という様な姿勢になったり、強行登山を繰り返したり、そういう登山スタイルになるのと同様に、どこか、違和感を感じてしまうのだ。

鉄道の旅は、「途中下車」にこそ、深い味わいがある。

それは、「ちゃり鉄」の旅でも同じだ。

気ままに途中下車して、自転車ならではの機動性を生かして寄り道をしながら、日本各地の風景の今を、写真や紀行で、未来に向けて残していく。

各駅停車「ちゃり鉄号」の旅は、そういう旅にしたい。

その結果、旅が終わるのは、20年後か、30年後か…。

寄り道が増えれば増えるほど、走破のゴールは、遠のいていく。

でも、もしかしたら、目指すべき「旅の終着駅」は、無くてもいいのかもしれない。

その問いの答えは、走り続けるうちに、見えてくるだろう。

自宅マンションのエントランスで出発を待つちゃり鉄1号
自宅マンションのエントランスで出発を待つちゃり鉄号

さて、記念すべき第1回目、「ちゃり鉄1号」は、私にとっての「旅と鉄道」の原点、近鉄難波線・大阪線を巡る旅とした。

第2回目の「ちゃり鉄2号」、山田線・鳥羽線・志摩線の旅と合わせて、憧れの賢島行き特急「ビスタカー」の旅を、「ちゃり鉄号」で再現しようと思っているのである。

本当は、「ちゃり鉄1号」で大阪難波から賢島まで走りたかった…。

しかし、会社勤めをしながらのちゃり鉄の旅では、この時期、前夜発での1泊2日が限界だった。この日程で大阪難波から賢島まで走ろうと思うと、どうしても、1日あたりの走行に無理が生じる。夜明け前から日没後まで、ただ、ひたすら走り続けるだけの旅になる。

それは、既に述べたように、私の求める旅のスタイルではない。

そのため、旅を2週続けて行うことにして、1号、2号の2回に分けることにした。

初っ端からこれでは、先が思いやられるが、それはともかく、こうして、スタートラインに立つと、感慨もひとしおである。

初日の今日は、仕事が終わってからの出発。

兵庫県内の自宅から約20km走り、大阪府内、淀川河口の矢倉緑地園地で野宿する計画だ。

矢倉緑地公園は、以前、日帰りサイクリングで偶然立ち寄ったことがあり、野宿にも使えそうだと思っていたので、今回の予定に繰り込むことにした。

日帰りサイクリングで訪れた日中の矢倉緑地公園 ~2015年2月~
日帰りサイクリングで訪れた日中の矢倉緑地公園
~2015年2月~

難波周辺まで足を伸ばして、どこか適当なところで野宿をしても良かったのだが、あいにく、難波界隈での野宿適地として思い当たる場所がない。

都会のど真ん中での野宿は、場所選びに失敗すると、不快な思いをすることもある。

ちゃり鉄の旅のスタートを、不快な野宿で始めたくはないので、淀川河口にあり、夜間には、釣り人以外の出入りが少なそうな、矢倉緑地公園を使うことにしたのである。

仕事が終わってからの出発ということもあって、時刻は既に21時目前。

走行距離は20km程度なので、1時間強の走行で到着できるとは言え、旅の時刻としては、極めて遅い時間でもある。あまり、のんびりしているわけにもいかない。

しばし、感慨にふけった後、車体のチェックや写真撮影を済ませ、いよいよ出発することにした。

ちゃり鉄の旅に備えて、装備は大幅にリニューアルした
ちゃり鉄の旅に備えて、装備は大幅にリニューアルした

自宅-矢倉緑地公園

ライトが行く手を照らす中、踏み出すペダルに、積み荷の重さが伝わってくる。

普段のサイクリングにはない、この、重厚な走り出しは、テント泊装備満載のツーリングならでは。気分は高揚する。

今夜は、車庫入回送という感じだな…と、考えたりしながら、各部分の調整具合を確認しつつ、住宅街の道を走り抜ける。

自宅近くのJR福知山線の踏切を渡り、5分ほどで、地元で産業道路と呼ばれる、主要地方道13号線に出る。ここからは、尼崎に向け、一路、南へと下る。

交通量の多い道を軽快に走り、国道43号線に突き当たると、今度は、針路を東にとって、淀川河口に向かう。

目指す矢倉緑地公園は、大阪市西淀川区、神崎川と淀川に挟まれたデルタ地帯にある。

出発して1時間弱で国道43号線から分かれると、そこは無人の工場地帯。

ひっそりと静まり返った中、ヘッドライトの明かりに導かれ、程なく、矢倉緑地公園に到着した。

思惑通り、数人の釣り人の姿が散見される程度で、野宿には不安のない環境だった。

時刻は既に22時過ぎ。

明日の出発は早い。

さっとテントを設営し、クールダウンに、辺りを少し散歩した後、早々に、寝ることにした。

時折、耳に届くさざ波の音が心地よい子守唄となり、あっという間に、眠りに落ちた。

阪神高速湾岸線の夜景が印象的な矢倉緑地公園の夜
阪神高速湾岸線の夜景が印象的な矢倉緑地公園の夜
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